「うまいっ」。朝市場の片隅で、一人が叫ぶ。
質素なアルミの器からスープを飲んだ途端、叫んだのである。
朝食はホテルではとらない。
東南アジアに行ったら、なおさらである。
ミャンマー中部、ニャウンシェでも、朝はまっすぐ市場に向かった。
うむ。みんななにを食べているのだろう?
揚げ豆腐(たぶん)に、様々な種類の野菜の入ったソースやタレをかけて食べている人。
大鍋になにやらカレーのようなドロドロなものが入っていて、それをご飯にかけている人。
他にも、変なちまきを食べている人もいる。
味がまったく想像つきません。
我々も負けじと、一軒に入った。
一人の男が湯気立つ大鍋に木の網をいれ、何かをすくい取っては別の器に捨てている。
つまりスープを濾しているのだな。だがなんのスープかはわからない。
頼めば、別のおばさんが器に麺を入れ、スープを注いで、薬味をトッピングして手渡された。
これに唐辛子や、レモンを搾りいれて好きなように食べろという。
スープを一口飲んで、顔を見合わせた。
魚のスープである。おそらく小海老もだしと下入っているに違いない。
溶け込んだトマトがうま味を支え、微かにニンニクの香りもする。
そう、ミャンマー風ブイヤベース麺なのである。
臭みは微塵もなく、魚の滋味だけが優しく溶け込んで舌を丸く包む。
料理の名前は、「ngamonti」という。
一人前、約70円。
まっすぐに、手間をかけて作られた料理は、国を超えて心を刺す。