朝食はあまり取らない。
1日の摂取カロリーをなるべく少なくしようという、無駄な抵抗である。
こういうと、医者や栄養士に反対されるが、それは彼らが僕の夕食における摂取カロリーを想像できないからだろう。
しかしホテルでたまに朝食ビッフェを取るときは、いけない。
根っからの貧乏根性と食い意地と好奇心がフル稼働し、少しずつながら料理は全種類試し、パンもご飯もいく。
だからこんなホテルの朝食がいい。
基本的に前夜暴飲暴食しても、朝起きるとお腹が空いているという、有能な胃袋を持つたがため、本当は少しだけも食べたい。
OMO金沢片町の朝食は、ヨーグルトに、リーフサラダと各種大根の薄切り、ミネストローネスープ、各種デトックスジュースという、シンプルかつすっきりとした不陣で、誘惑がない。
悩むとしたら、六種類のメイン料理を選ばなければならないことだろうが、ここは断然、「棒茶と生麩のリゾット」だろう。
芳香豊な棒茶の香りが米に染みて、ゆっくりと舌を喉をすぎ、胃袋に落ちてゆく。
その中で生麩の穏やかな甘みが、そっと開く。
あられ揚げにした麩のアクセントもいい。
「おはよう。今日も胃袋と肝臓を酷使するんだろうね。でもあまり無理しないようにね」。リゾットにそう言われる。
「はい気をつけます」。
僕はそう答えてスプーンを置いた。