5食目。
それは3年前に始まった。
「高知産のこむぎでうどんを打ちたいのですが」。高知大農学部教授を訪ねてきた、いかつい体に鋭い眼光の男は、市内でうどん屋を営む、高橋一雄さんだった。
それから3年、試行錯誤の上に出来上がったうどんが目の前にある。
艶やかな光を放ちながら、早く食べてとさそっている。つゆを少しだけつけ、勢いよくすすった。
歯を押し返すような弾力の中から、ほのかな甘みが滲み出る。口から少し空気を入れると、こむぎが香った、
穏やかさの中に、パンのような甘いかおりが、微かに潜んでいる。その香りが、うどんをすするたびに鼻をくすぐって、箸を持つ手を急がせる。
まだ市販ベースではないそうだが、今後増産し、将来は麦畑の前に、うどん屋を作るのだと聞く。
唇が、鼻が、うどんを覚えている。も一度食べたいと、言っている。
5食目
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