そのスープは、どこまでも清い。
そのスープは、どこまでも深い。
一口飲むと、たちどころに丸いうまみが舌を抱きしめる。
やがてゆっくりと喉に落ち、密やかに細胞へ染み渡っていく。
はあ。
滋養の濃密さに、ため息が出る。
はあ。
馥郁たる香りに、ため息が出る。
孔雀の骨と皮でじっくりと出汁をとり、孔雀のひき肉を入れて汁を澄ませていく。
あの綺麗な羽の奥には、凛々しき肉体が宿っていた。
尊き命が輝きを増し、僕らの口に入つて、体の一部となる。
そのありがたみが、飲むたびにせりあがり、心を満たすのだ。
孔雀は観賞用として島に持ち込まれたが、無策ゆえに繁殖しすぎ、害鳥として毎年大量に駆除されているのだという。
人間の勝手で繁殖させられ、人間の勝手で殺される。
無残に消えゆく無垢な命を、もう一度輝かせたい。
渡真利 シェフの思いが込められたスープは、体中を喜ばせながら、甘美な記憶として、永遠に刻まれる。
宮古島「エタデスブリ」