<半チャンラーメンが頼めない>

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<半チャンラーメンが頼めない>
街のラーメン屋に入って、悩まない人を尊敬したい。
中華そばか焼きそばか、ニラレバかタンメンか、餃子か中華丼か、僕の思いは千路に乱れ、七転八倒する。
それが席に座ってすぐ、「チャーシューメン」と、頼む人がいる。
すごい。
あれは道すがら考えてきたのだろうか。
明日の昼はチャーシューメンを食べるぞと決意して寝たのだろうか。
僕とは、決断力が違う。
心から尊敬をする。
その点、半チャンラーメンは素晴らしい。
炒飯とラーメンという悩みを一気に解消するわけだから、考えた方は天才である。
半チャン焼きそばや半ニラレバ半チャンとか、半タンニラレバとか、いろいろ考えて欲しいのだが、世の中にはそういう店もあると聞く。
しかし。
その素晴らしき「半チャンラーメン」が、僕は頼めない。
いざ運ばれると、炒飯とラーメンのどちらを先に食べるべきかと、悩んでしまうのである。
炒飯を手につけていると、ラーメンがのびてしまう。
逆だと炒飯は冷めてしまう。
交互に食べてもいいのだが、ラーメンスープは炒飯に合うが、麺と炒飯は合わない。
次第に互いの味に集中できなくなり、そして僕は途方に暮れてしまう。
どうしたらいいのか?
ある日名案を思い付いた。
半チャンラーメンを頼み、「すいません炒飯は後でくれませんか」という。
あるいは、ラーメンを頼み、大分食べ進んだところで、「すいませんこれを今から半チャンラーメンにできませんか」と、頼む。
ラーメンのスープを合いの手にして、心置きなく食べる炒飯はおいしい。
しかしそこまで店主の手を煩わせて、半チャンラーメンを頼むべきかという問題があって、僕は中々半チャンラーメンが頼めないのである。