枇杷。

日記 ,

「私、頬っぺたに水のこぼれるような枇杷が食べてみたい」。

林芙美子「松葉牡丹」の一節である。

戦前の日本人にとって、枇杷がいかに魅力的であったのか。

今では、水のこぼれるような枇杷どころか、手に取ることも少なくなった。枇杷の皮を剥き、果肉に齧りついたかじりついた時の、そこはかとない甘さ。

鼻に抜けていく瑞々しい香り。

現代の甘味重視の果物にはない尊さがあって、しみじみうまいと思う。

そうだ、今年は沢山食べてやろう。