寒さが恵みです

食べ歩き ,

「僕らの土地の恵みは、寒さです。寒さがあるから魚にも脂が乗る。そして春のありがたみがわかるのです」。
琵琶湖湖西・魚津の老舗「魚治」の佐嵜さんはそういった。
そんな恵みの一つであるのが、この時期ならではの「フナの子つき(子まぶし)」である。
魚の卵を魚の刺身にまぶすという、他の魚では滅多にやらない料理を、この地では長らくやってきたという。
普段はフナは60mくらいの深いところにいるが、3月くらいになると卵を産むために岸に寄ってくる。
だから漁師も獲れるようになり、出回るのである。
そしてこの時期のフナが最もうまい。
淡水魚の中で唯一寝かせることができ、このフナは数日寝かせたのだという。
噛めばねっとりと甘く、プチプチと弾ける塩茹でした卵の塩気がさらに親の甘みを引き立てる。
それは噛めば噛むほどに舌に甘え、すかさずそこで七本槍をやれば、フナと一緒に湖底に潜って行くような感があり、幸せに押し黙るのであった。
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