雉のすべてがここにある。

食べ歩き ,

雉の優しさも勇猛さも、純真も艶も内包していた。
ギリギリまで火を入れた、香ばしいパイを割れば、肉が顔を出す。
練りに練られた肉と柔らかな身が抱き合って、早く食べてと誘っている。
雉のフォンにトリュフが香る、深淵なうまみを湛えたソースをからめ、口に運ぶ。
ああ、これぞフランス料理のデカダンス、エレガントが生み出すよこしまである。
僕らを森へと誘い、宮殿の奥へと連れ込み、陶酔させる。
赤ワインはそこへ色気を刺し、僕らは少し淫靡な気持ちで、微笑みあう。

「シェ・イノ」古賀シェフ、渾身の雉のパイ。