久々に風邪をひいた。
重度ではないが熱があってふらりと頭が揺れ続けている。
「ゲルマニウム温浴サービス期間、20分千円」という安さに引かれ、表参道のクリニックで温浴して、軽装かつのぼせた状態で寒風に当たったのがマヌケな原因だ。
だが食欲はある。
今、なにが食べたいかなあとふらふら頭で考えた。
なにを食べるべきかなぁとうつらうつら考えた。
「湯葉あんかけご飯」だ。
四谷荒木町の京料理「八平」だ。
ダシで炊いた湯葉に薄く味付けをして、葛でとろみをつける。
小鍋で湯気を立てながら運ばれる湯葉あん。
天には、おろし生姜と九条ねぎの千切り。
ざっくりとまぜて、熱々ご飯にかける。
はふはふ。ずるずるっ。
湯葉の優しい甘みとダシの滋味が胃袋に染みていく。
はあっ。と幸せのため息をついて茶碗をおく。
いま食べるならこれだ。
いや熱々のかぶら蒸しも風邪に利きそうだ。
いもぼうでもいいぞ。近こうよれ。
想像ふくらますうちに、風邪が退散していく予感がした。
閉店