ああ、なんたることだろう。今までラビオリと信じてきたものは、まったく違うものだった。
ヒューストンからメキシコシティへ、ペルーLATAM航空に乗った時のことである。
CAが美しい。
これが南米美人かと見惚れてしまう。
その一人、ライス・リベイロ(知らない人はググってね)似のCAが、「ラビオリとチーズです」と、白い歯を見せて笑い、自信たっぷりに言うので、それを選んだ。
アルミ箔を開けると、そこには、想像と違う世界が広がっていた。
写真に出したような、小さな餃子状のラビオリではない。
皿いっぱいに長方形のパスタが横たわっていて、半分には赤茶色のソース、半分にはチーズがかけられ、チーズの端にはホワイトソースらしきものがかかっている。
同じラで始まるしだし、ラザニアと間違ったんじゃない? と言いたそうだけど、違うんだな。
ラビオリはRだし、ラザニアはLだし。
しかもよく知るラザニアとも違う。
長方形のパスタは、ラザニア風に4枚重ねられているのだが、その間にはソースも肉も挟まっていない。
ただ実直に、4枚重ねられているだけなのである。
その食感が素晴らしい。
ぶよぶよといおうか、ネッチャリと言おうか、分厚いパスタが歯にしがみついては、すぐ離れる。
パスタというより、こりゃあすいとんだな。
グルテンの粘りが、歯に助けを求めてくるのだが、その求め具合が中途半端である。
赤茶色のソースは、玉ねぎを炒めたものにケミカルな旨味を混ぜ込んだとみられ、自然な玉ねぎの甘みと化学的旨味という矛盾を胸に突きつける。
そんなソースと、ホワイトソースにチーズがかかったすいとんを想像してほしい。
すごくまずくはない。
でも、すいとんにチーズかけても美味しいかも、とは絶対に思わない味なのだった。
しかたなく、四当分に切り、胡椒と赤ワインを少しかけ、味の向上を狙ったが、元の味は意外にしぶとく、やけになってそこにバターを混ぜ込んだら、さらにまずくなってしまった。
でも残さない。
自らの行為に責任を取るため、半ば自暴自棄、半ばM体質となって食べ終えたのであった。
ライス・リベイロもこれを、普通に食べているのかなあ。