<国家的損失>

日記 ,

<国家的損失>
僕は怒り、嘆いている。
日本の発酵食文化、郷土料理を蔑ろにしようとする行政の横暴が許せない。
食品衛生法の改正に伴い、2024年6月以降は、専用の加工場など衛生的な施設で製造した漬物しか販売できなくなるからである。
これによって、おばあちゃんたちが自宅で作っていた漬物や発酵食品は売れなくなってしまう。
彼女たちは、新たな設備に投資できないし、実際は作らなくなってしまうだろう。
作物がない時期でも、安心安全に食物を長期保存できるよう考え出された食品が消えていくことになる。
いや完全に消えることはない。
大手会社などは、発酵食品を作り続けるだろうが、それでは最大公約数の味しか残っていかない。
伝統食品は、多様性こそが魅力なのに。
高知には、300年間も続いた「日曜朝市」がある。
長さ1kmにも及ぶ日本最大の市民市場である。
おばあちゃんたちが育てた野菜や、煮物、漬物などを売っている。
ここで僕は田舎漬けと呼ばれる、沢庵の6年ものや10年もの、梅干しの6年物などを買ったことがある。
市販のそれ(市販には年代物はほぼないが)とは比べ物にならない深さが、味にあった。
自然や微生物への畏怖さえ感じる、複雑な味と発酵食品の深淵を感じて鳥肌が立った。
「こんな6年ものなんて儲からんて」
そうおばあちゃんはぼやきながら、にこやかに売っている。
同行して有名な料理研究家は「明日からこのおばちゃんの家で修行したい」と、興奮していた。
おばあちゃんたちは、何代にもわたって受け継がれてきた味の形を守ってきたのである。
それはレシピなどという安易な言葉では表せない、見えない味であり、形である。
江戸時代から続いてきた叡智が、お婆ちゃんたちの手に宿っている。
それこそが文化である。
つないでいかなくてはいけない文化である。
何百年も繋いできた、目には見えない身体能力が失われようとしていることに誰も気付いてはいない、
これは国家的損失でもある。
だが行政は、なんの代替案もなく、廃止しようとしている。
日曜市から、おばあちゃんたちが姿を消す。
彼女たちのの生きがいをも略奪する。
日曜市から、伝統発酵食品がなくなる。
胸が痛む。やるせない。
みなさん何かいいアイデアがあったらコメントをください。
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(秋田の割烹「たかむら」の高村さんはファンドで工房を作るようにしていると言われました。ただ高知のような場所では距離がありすぎて一箇所には集められないでしょう)。
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