<単色に響く洗練と共鳴>

食べ歩き ,

<官能を抑えた、単色に響く洗練と共鳴>
そんなイメージがある「パッサージュ53」佐藤シェフが、特別に肉料理の後にパイ焼いてくれた。
コルベールのパイである。
焦げる寸前まで焼き切られたパイにナイフが入ると、「サクッ」と音が響く。
そして赤茶色の役者たちが顔を覗かせた。
フォアグラ、内臓、胸肉。
肉を切れば、まだ命を宿す赤色が輝いている。
食べた。唸った。なにも言えずに唸った。
舌先だけでなく、脳幹を揺さぶる味わいは、「おいしい」とは口走らせない。
ただ唸って、首を後ろに倒し、目を閉じて、再び唸るだけである。
これから太らんとする野生の鴨が、口の中で雄叫びをあげる。
血や鉄分や内臓の甘みや香りが、激流となって注ぎ込む。
我々を森の奥へと引きずりこむ。
フランス料理の王道であるが、これもまた佐藤シェフの表さんとする、単色に響く洗練と共鳴なのだ。