麦の波が、美瑛の風になびく

食べ歩き ,

麦の波が、美瑛の風になびく。
茶が濃い“ゆめちから”は、丈が短く、すくっと立っている。
小麦のタンパク質は6%〜15%までだが、ゆめちからには、16%を超す含有量のものもあるという。
だからグルテンも強力で、噛めばもちっと根性のあるコシで答える。
美瑛の小麦農家の浦島規生さんが、刈り取りの様子を見せてくれた。
麦畑にはいると、生のトウモロコシのような青色の甘い香りがする。
「これが小麦の香りです」と言う。
小麦を手にとってすりあわせ、籾を噛んでみた。
固い籾をゆっくりと噛み締めていると、微かな甘みが最後に滲む。
最新鋭の巨大機械ニューホランドは、麦を苅り、もみと籾殻、茎を選り分け、籾だけを体内に貯める、精密機械である。
ゾゾゾゾッ。軽快に麦が、刈られていく。
ふさふさした薄茶色の大地が平たくなって、眠りにつく。
こうして“ゆめちから”は、日本の誇りを背負いながら巣立つ。
パンとなり、僕らの唇や歯を喜ばせるために。