鯖の黄味ずし六個千二百円

食べ歩き ,

ハ竹

鯖の黄味ずし六個千二百円

「八竹」は、東京を代表する大阪ずしの名店である。

茶巾、ちらしずし、バッテラ、穴子胡瓜などの巻き物など、どれを選ぼうが間違いがない。

しかしあえてお奨めしたいのが、オリジナルの「黄味ずし」である。 元来日本料理の手法であった「黄味ずし」を、先代が試作を重ね、戦後まもなく現在の形に落ち着いたのだという。

握りずしを醤油につけずに、玉子の黄身の味わいとともに食べるというだけあって、黄身おぼろの作り方が要となる。

厳選した玉子の黄身に、砂糖、味醂、酒を入れ、弱火でじっくり火を通していく。それを裏ごしして、しめた青魚の握りずしの上に乗せるのである。おぼろといっても、しっとりとした食感に仕上がっているので、同じくしっとりと汁を含んだ、鯖、鰺、こはだの握りと、誠によく合う。

さらに控えめな調味によって生かされた、黄身自体が持つ自然な甘みが、魚のうまみと違和感なく溶け込む。

姿もいい。青柚子の時期なら、魚の銀の皮と白や薄赤い身に、鮮やかな黄色のおぼろと若緑の柚子が華やぎを添えて、食欲をそそる美しさである。

人気は鰺だそうだが、これからの季節、脂がのった鯖もいい。かなり大ぶりだが、男性なら是非一口で頬ばりたい。おぼろを上にして頬ばると、鯖の小気味よい香気と強いうまみ、玉子の甘み、酢めしの酸味、柚子香が一体となり、うっとりとなる。

店内は持ち帰りのすしを買う人で混雑するが、黄味ずしと上品な味わいのお吸い物(二百五十円)を頼めば、喧噪など気にならなくなって、ゆったりと至福の時間を満喫できよう。