<駅弁勝負> 第58番     番外編

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駅弁勝負 番外編
泉昌之の漫画、夜行列車を思い出した。
淡路屋の新作だという「なにわ御膳」である。
なにわ名物を詰めましたというコンセプトで、かやく飯、煮ダコ、南瓜煮、たこ焼き、焼肉、焼きそば、串カツなどが入っている。
さあどういう順番で、攻めようか。
やはり味の淡いものからいこう。
野菜に手を出し、幕の内の三種の神器である、焼鮭、カマボコ、玉子焼きに移行する。
次に味の濃い焼肉でご飯をかきこみ、最後は焼きそば、たこ焼き、串カツの三者だな。
この弁当を食べるなら、明らかに三者をクライマックスにもってこなくてはいけない。
順番は、焼きそば、たこ焼き、串カツの順で決めよう。
ふふ、作戦は完璧である。
自らの筋書きに酔いながら、進行した。
そしていよいよクライマックスである。
オリバーソースを三者にかける。
冷えた焼きそばとたこ焼き、意外にいけるじゃないか
そして串カツの出番がきた。
ソースをかけ、足りんかったら、二度漬けしちゃうもんねと微笑みながら、串を手に取った。
串カツ分のご飯も残してある。
一口食べた。
その途端、歯が空振りをした。
なんと豚肉ではない。
玉ねぎカツではないか。
しかも空洞化が進む、スカスカの玉ねぎカツなのである。
これではご飯が、まったく進まない。
クライマックスが迎えられず、他に代替えもきかない。取り返しもつかない。
硬球と思って打ったら、ゴムボールだった。
ストライクと思っていたら、寸前で球がガーターに入った。
山の頂上が見えたと思った瞬間に、雪崩が起きて麓にいた。
すぐに犯人がバレたサスペンス、いや特急だと思って乗ったら各駅だった。
とにかく作戦は水泡と化し、はかなく消え去った。
今日はたまたま近辺で駅弁を食べている人がいなく、勝負はできなかったが、もし勝負をしていたら、完敗だったろう。
僕は頼りない玉ねぎカツを噛み締めながら、自分の甘さを、深く反省した。