<駅弁勝負> 第29番 (前号の続き)
ああ、なんともうまい。
この「とろ〜り」という命名に、客への媚びを感じたが、買って正解である。
「とろ〜り」というより「ふわ〜り」で、穴子は舌に乗せた途端、ほぐれていく。甘くほぐれていく。
すかさずご飯をたべれば、味付けがほどよい淡さで、少しモチッとして、米自体のおいしさがある。
タレというかツメも、こっくりと甘辛いながら後味よく、穴子を生かす。1300円と高価ながら、穴子の質がいい。
穴子を食べてからご飯を食べても、ご飯と一緒にして鮨のようにして食べてもいいんだな。
穴子の甘みとツメの甘みが広がって、その後にご飯の優しい甘みが来る。そして喉に落ちる刹那、穴子の香りが抜けていく。
穴子の味を一旦切る、柴漬けや小松菜漬けの選択も素晴らしい。
最初からこれにすれば圧勝だった。
弁当の後悔、先に立たず。