隠れうどん県高知の実力7 <うどんと茶の関係> 「茶農家の店あすなろ」の巻

食べ歩き ,

高知のいいところは、海沿いから車を30も走らせれば、山中に入るところである。

海と山という自然の原点に、身を置く心地よさを味わえるところである。

今朝も山中に入り、山道を走ること1時間、山深い吾川郡仁淀川町沢渡地区にやってきた。

山深いといっても、高知市内から1時間20分ほど走行してきた地域である。

清流が走り、山々が迫る。

果たしてこんなところにレストランはあるのだろうか。

するとその店は、街道沿いにポツネンと佇んでいた。

「茶農家の店あすなろ」と書いてある。

陽光がたっぷりと差し込んだ店内が心地よい。

しかしその先のテラス席に陣取ることにした。

流れゆく川の音が遠く聞こえ、鳥のさえずりが響く。

そしてなにより、空気が澄んで清々しい。

こんなところでいただく食事こそ、「ご馳走」と呼ぶのに相応しいのではないか。

都会で生活する我々にとっての、かけがえのないご馳走である。

さっそく、地元のお茶を練りこんだうどんによる「沢渡うどん御膳」を注文した。

まず出されたのは沢渡茶である。

丸く甘い、気持ちがほっこりとなる茶の味に和む。

ここ沢渡は、代々茶畑が多く、沢渡茶という茶を作ってきたという。

店主の岸本実佳さんは、ご主人がこの地区の出身で、都会で働かれていたが、過疎化が進む沢渡地区を活性化したいと思い出移り住み、「ビバ沢渡」というプロジェクトを作り活動なさっている。

その拠点がこの店である。

お茶は、和紅茶で、発酵させているのだという。

発酵茶ならではの渋い旨味がいい。

「沢渡うどん御膳」は、ほんのりと茶の香りが漂ううどんで、茶塩胡麻、刻み海苔、とろろ昆布、お揚げをトッピングしながら食べるのが楽しい。

ここ沢渡地区はかつて、きれいな川の近くに茶畑が連なっていたという。

しかし高齢化によって茶農家廃業による放棄茶園が増え、20数軒が3軒になってしまった。

その現状をなんとかしたいと思って移住してきたのが、岸本夫妻である。

ご主人の祖父母が茶農家をやられていて、13年前に移り住んだという。

「景色を護りたい」。

「沢渡茶」ブランド名をあげたい。

その一心でやられてきた。

この次は是非4~5月に来て、美しい茶畑を見たいと思った。。

岸本さんたちは、飲食店だけでなく、生茶の佃煮といった、様々な茶の商品も開発されてきた。

おそらく、相当苦労もされてきたであろう。

しかしその話をされる岸本さんは、苦労の影など微塵も見えず、明日への希望に満ちた笑顔が輝いているのだった。