銀杏麺

食べ歩き ,

それは銀杏麺という名の料理だった。
麺はすりつぶした銀杏と椿油で作ったという。
「麺だけを先に食べ、次にスープを飲んでください」と、いわれた。
麺は少しもちっとし、微かな塩味が付いている
つるるるとすすれば、口の中が洗われるよう清らかさがある。
味を探せば、遥か遠くに銀杏がいるような気がする。
次にスープを飲んだ。
ああ。
舌が驚き、体の力が抜ける。
そこには銀杏しかいない。
普通すり流しは、出汁や塩が入る。
しかしそれは、銀杏と僅かな水だけなのであった。
塩も出汁も入らない銀杏スープに、甘みはほとんどない。
ほろ苦さが舌に抱きついてくる。
一瞬、銀杏の精霊と出会った気がした。
皿の上には薄黄色のスープが張られ、、柿が置かれている。
リンゴと生姜のスープだという。
柿は熟れ切っているが、なぜか色はまだ鮮烈なオレンジ色で、身もしっかりしている。
枝からもいだばかりの溌剌さがあるのに、なぜ熟れに熟れているのだろうか。
その妖艶な甘みを口にしながら、スープを飲む。
するとどうだろう。
りんごの酸味と生姜の辛味が、熟れた甘さを包み、エレガントな気分にさせるのだった。
この料理とて、際どい組み合わせだろう。
だがそのバランスが精妙で、熟れ柿を優美にさせるのだった。
韓国ソウル「オンジウム」にて。