「着いたらその日に、洗わずに食べてください」とメッセージが添えられて、苺が届いた。
ふたを開けた途端に、芳しい空気が漂って、苺畑になった。
いつも苺は、ヘタを持ったまま、とんがった先から食べるが、これはヘタ側から食べてくださいと説明書きにある。
ヘタをを取り、歯を立てて、そっと齧れば、ほのかに甘く、柔らかな酸味が舌を走る。
「私は甘いだけじゃないのよ」と、耳元で囁かれた気がした。
そう甘みは、酸味があってこそ輝く。
尖った先に向かって齧っていくと、次第に甘みが増し、先端はぐっと濃い。
だがその甘みは、単なる糖度が高いというのではない。
先ほどの酸味の余韻と出会い、打ち震えるような甘みが、優美に笑うのだった。