自己ステーキ史上

食べ歩き ,

自己ステーキ史上、最短の滞在時間である。
滞在時間25分。約15分で280gのステーキを平らげて外に出た。
たった8席の店に入ると、注文も取らずに親父さんが焼き始める。
鉄板にバターをひき、ピーマン、玉ねぎの輪切り、ナス、豆腐、ジャガイモを乗せて、焼き始める。
さらにマリネしていた厚切りのヒレ肉を取り出し、塩をふり、えっ? と思うほどの胡椒を振る。
野菜類をコテで上から押さえつつ、肉を鉄板に乗せる。
すぐに裏返して約10分、肉は焼きあがる。
上にメートルバター小を乗せ、醤油ベースのソースをたっぷりかけて完成した。
堂々たる量だが、するすると口の中を過ぎ、喉元に落ちていく。
肉自体に味があり、ソースも濃いめなので、猛然と白いご飯が恋しくなるが、ご飯はない。
持ち込んでもいけない。
ここはただ黙々と、かつ迅速に、牛肉と対峙する場所なのである。
どうやらやわやわになった蒸しパンがあって、頼めば出してくれ、それをソース漬け、染み込ませて食べるという儀式があるらしいのだが、肉に敬意を払って今回は、やめた。
こうして瞬く間に食べ終わり、「美味しかったです」というと、ご主人林肇さんが嬉しそうに微笑む。
「肉お好きなんですか?」と聞くと、
「肉はいつでも食べられるからねえ。本当は魚の方が好きなんだ」と、子供のような顔をして笑われた。

ちなみに、金沢に来るたびに寄られるという隣の常連は、俳優のTK夫妻だった。