肉はしっとりと汁をたたえながら、歯を受け入れた。
熟成香が、品を漂わせながら流れていく。
噛むごとに、滋味という底無し沼に沈んでいくコーフンがある。
噛むごとに、耐えることなき旨味と舌が舞う喜びがある。
そこへ樽出しブナハーブンを流し込む。
アイラ特有の磯香が弾け、口の中はかっと燃えて、肉の猛々しさを焚きつけた。
我が血も昂って、荒々しい鼻息が出る。
そうでありながら、なにやらノーブルな気分になるのは、命の水としての気品なのだろうか。
新保さんが手当てした肉と、高貴なモルトが出会える夜に感謝して。
金沢「倫敦屋酒場」にて。