精神を鍛え、発想力を高めるもの。

食べ歩き ,

まずいものは、精神を鍛え、発想力を高めてくれる。
だが現代の日常では、まずい食事に出會うことは、極めて稀である。
そういう意味で、機內食は貴重な経験を與えてくれる。
初のネパール航空のビジネスクラスは、チキンとライス、チキンと野菜、ビーフのライス、ビーフと野菜が選べる。
チキンとライスを選ぶ。
前菜は、鶏胸肉とエビのポシェ。
サラダ、クリームチーズとゴーダチーズ、胡桃に、乾し杏。
エビは硬いがボソボソではなく、胸肉はしっとりと仕上がっている。
そこで一計を案じて、鶏肉、レタス、ドレッシングで、サンドイッチにしてみた。
だが、口から水分を奪おうとするパンが邪魔して、どうにもそぐわない。
メインが運ばれた。
ライスはカレー風味である。
喫茶店のドライカレーの薄味風といったところか。
チキンにはトマトソース、つけ合わせは、ポテト、インゲンである。
このチキンが奇跡だった。
塊肉なのに、輓肉を固めたような、チキンミートローフか、パンにチキンの香りを纏わせたような食感である。
これではダメだと思い、細かく切ってソースと和え、さらにバターを投入してみた。
だが努力も虛しく、半分以上殘してしまった。
2回目の食事、かぶってしまった。
シーフードドライカレーと白身魚のグリルである。
ドライカレーは、先ほどよりカレー風味が強く、喫茶店ドライカレーと同等であった。
具は、緊張しすぎてカチカチになった小エビと、1年以上置き去りにされていたと思われるアサリ、色合いでしか存在が判斷できないネギであった。
しかしカレーは偉大である。
カレー香に惹かれて、全部食べてしまった。
白身魚の方は、グリルされ、蒸し直されている関係で疲れ果て、体の水分とうまみを抜け切らせてしまっている。
これは魚の焼き物ではなく、そぼろだと自分に言い聞かせ、粉々にしてトライカレーと合わせてみたが、やはり余計なお世話で、残してしまった。
なぜさっきのdressingとバターを隠し持っていなかったかと、反省しきり。
やはり、機內食は面白い。