生物には必ず野生の純粋さと猛々しさが共存している。

食べ歩き ,

生物には必ず、野生の純粋さと猛々しさが共存している。
自らの脂で巻かれ、五時間焼かれたというツキノワグマは、その神秘を体現していた。
肉の断面は、切られているのに膨らんで、命の咆哮をあげようとしている。
噛めば、まるで生肉のようなしなやかさなのに、芯まで加熱されたことによって引き出された滋味が、舌を包む。
その味の凛々しさの中には、澄んだ、触れてはいけないような清さがあって、胸を突く。
熊の複雑な味わいに翻弄されながら飲み込もうとすると、ふわりと野生が香る。
それは、脂と肉を一緒に合わせて食べればなお加速し、鼻息を荒くさせる。
高良シェフの卓越したキュイソンと、食感を生かすための繊維の見極めによって、ツキノワグマは、人間に感謝の念を抱かせながら、昇華していく。
銀座「レカン」にて。