小浜「生簀割烹 雅」

甘鯛料理三種。

食べ歩き ,

3位が湯かけ。
準優勝が、寿司。
優勝が、しゃぶしゃぶだった。
小浜「雅」で、甘鯛フルコースをいただいた。
6種類の料理が出される。
3位の湯かけとは、塩焼きの甘鯛を食べた後の骨やヒレを皿に集め、熱々の湯をかけ、梅塩を降ったものである。
「あはぁ」。
飲んだ瞬間、体の力が抜けていく滋味に、目を細める
準優勝の寿司は、700g級の厚い身を、塩し、昆布締めにしてから、皮を炙って柔らかくし、酢洗いした甘鯛を酢飯と合わせた料理だった。
ムチっとした体躯に歯が入る。
品のある甘味を滴らせながら甘鯛は崩れていき、酢飯と踊る。
色気が漂い、心が揺れる。
そんな寿司だった。
そして優勝は、始めていただくしゃぶしゃぶである。
沸沸と湧く甘鯛の出汁に、切り身を横たえる。
待つこと30秒くらいだろうか。
うっすらと白くなったところを引き上げる。
半生より少し火が入った頃合いが一番いい。
しなやかという言葉は、この料理のためにあったのかもしれない。
「うっ」
噛んだ瞬間に、嗚咽を漏らす。
何か食べてはいけないような、禁断の食感があって、心が疼く。
気品のある甘みが舌をすうっと通り過ぎ、空気となって消えていく。
はかないような、怪しいうまみがそこにはあって、もう一枚、もう一枚と箸が伸びていくのだった。