梅干しをかじると、梅の味がした

食べ歩き ,

梅干しをかじると、梅の味がした。
こんな当たり前なことを、どうして忘れていたのだろう。
どうも最近の梅干しは、へつらっている。
梅干しなのに蜂蜜などを加えて甘く、うま味も増やし、「どうおいしいよ」と、誘いかけてくる。
味わいに甘言が潜んでいる。
僕は梅干しに、甘みも余分なうま味も求めない。
昔のような、母や祖母が作ったような、しょっぱく酸っぱい梅干しが食べたいと思っても、なかなか出会うことができない。
しかし同様なことを考える生産者もいて、甘みやうま味の添加はもちろんのこと、商品の日持ちを向上させるビタミンB1や酒精も使用せずに作った梅干しがあった。
和歌山「岩惣」の「なちゅら」である。
低塩ながらも、紫蘇をたっぷり使って漬けた梅干しは、自然の色気がある。
朝の清涼を取り戻す、活気がある。
ふわりと梅がつぶれて唇を包み、まあるい酸っぱさが舌に流れ、最後に梅の香りがふっと漂い残る。
そうだっと、おにぎりに入れてみたら、ご飯が喜んで甘みを増し、笑顔が膨らんだ。