ピエール・アレシンスキー。91歳。

日記 ,

書道から影響を受けたという、地面に布を置いて描くスタイルは、心の情念が腕の筋肉に伝わり、無意識と意識が交差しながら作品が生まれていく。
創造の波に身を委ねて生まれるその作品は、エネルギーの爆発でありながらも、園児の絵のような無垢な心も表している。
怒りもあるが、ユーモアもあり、痛烈な社会批判もあれば、漫画もある。
そう世の中とは、人生とは、常に相反するものが渦巻いている。
絵は、すべて左手で描く。
「僕は生まれつき左利きだったので、文字を書くときや生活をするときは右手に矯正された。だから左手は、今まで他人に一度も委ねることなく、真実の手として残った」
現在は体力が衰え、床において描くことはできずに、机の上やキャンバスに布を置いて描いているという。
まだまだ精力的に描き続けているアレシンスキーは言う。
「もう僕は人生の終わりに近づいている。もうすでに描けるものはすべて表現しつくしたかもしれない。
でも明日絵を描き始めれば、また何か見つけるかもしれない。何もしないで、もう終わりだは悲しすぎる」。
ピエール・アレシンスキー。91歳。