料理の力。

日記 ,

リヨン近郊のヴィエンヌにある名店「ラ・ピラミッド 」で、先日修行された森永シェフからこんな話をうかがった。
フェルナンポワンという偉大なシェフから店を受け継いだ、現オーナーシェフのパトリック・アンリルーシェフは、数年前店の内装を大改造することに決めたという。
そのとき彼は、改築して4月にリニューアルオープンをすると発表した。
それを聞いたフランス人たちは、皆驚愕する。
「何を馬鹿なことを言っているんだ。4月に再オープンできるわけがないじゃないか」と。
なぜならフランスの職人はのんびりで、最初から期限など守る気もない。
いい加減なので、4月までに工期を終えることは不可能だからである。
良くても数ヶ月、下手したら半年も期限より遅れてしまうのは、フランス建築業界の常識だった。
ところが、「ラ・ピラミッド 」は、見事に改築を終え、4月から店を開くことができたのである。
なぜか。
パトリック・アンリルーシェフは、建築現場に出かけ、ご飯を作って職人たちに振る舞ったのである。
それも、毎日欠かさず作ったのだという。
誠実な料理が、職人たちの心を動かしたのであった。
その話を聞いて、辰巳浜子さん(辰巳芳子さんのお母さん)の言葉を思い出した。
「正しい食事をしているところに問題は起きない。めんどくさいという心が、地球を破壊する」。