弁当勝負第58回
通路を挟んだ隣は、ブロンドの髪をした、欧米人(たぶん)母と娘(たぶん)だった。
娘が30.母が52くらいだろうか。
まず娘が海苔巻きを出した。
海苔巻きといっても、海苔とご飯が逆転し、酢飯が外側に来ている、通称「裏巻き」である。
まず、醤油をかけ、中の具(おそらく穴子)だけを食べて、ご飯と海苔は食べない。
途中でガリの入ったビニール袋を取り出し、困惑顔で母に見せる。
「これなに?」
「わからん」
わからないものは食べない。正しい。
やがて全部具をつまみ出して食べると、細く長い指で、残った酢飯と海苔を、醤油につけながら食べ始めた。
血糖値が上がらない配慮だろうか?
食べ終わるのを見届けた母が袋から取り出したのは、ホットドア用のパンにハムとチーズを挟んだものである。
彼女は、切れ目から噛り付いた。
そして歯でハムとチーズを引きずり出すようにして食べるのである。
やがてそれが終了すると、残ったパンを食べる。
炭水化物は最後。
料理は違えど、この美人母娘の食べ方は徹底している。
一方僕は、田ごとの「御旅弁当)。である。
1650円と少し高いが、1100円くらいの弁当を買って地団駄踏むよりはるかにいい。
おかずの味付けが丁寧で、いい質のものを使っている。
食べて心が安寧になる弁当である。
箸がもう少し長かったら完璧なのにな。
僕も、母娘に倣って、筍ご飯は最後にしようと決めていたが、少しだけ食べてしまったらおいしくて、誓いを守ることはできなかった。
折詰弁当 御旅 1650円 田ごと
ご飯 2おかず 2価格1
箸1 特記筍とサーモン 郷土色1
総計8点(すべて2 蕎麦のみとなめこ、出汁巻玉子 筍ご飯サーモン味噌漬け 筍煮近江コンニャク煮小芋煮小茄子煮ひろうす煮海老煮笹巻き麩ゴボウ煮酢蓮根一寸マメはな麩フキに柴漬けどれも丁寧な味付け)