年の頃なら18くらいか

食べ歩き ,

年の頃なら、16歳くらいだろうか。
若々しさに満ちた味には、恥じらいがあって、それが舌を焦らす。
噛めば、微かにモチッと歯の間で弾み、まだ色気はないが、これから伸びようとする命の息吹が溢れ出る。
その切なさがいい。
一瞬を切り取った、いたいけな刹那がいい。
仏手柑の皮の香りが、その切なさに優しく寄り添って、命をいただくありがたさを膨らます。
この時期にしかない「新子」、ソウダガツオの子供である。
高知「ゆう喜屋」にて。

もはやその姿は、凛として、手をつけるのをためらうほど神々しい。
冬を迎えて脂を溜め込む前であるこの時期のカツオは、色気と潔さが入り交じった、自然の不思議を抱えている。
この上なく新鮮で、噛めばねっちりと舌にしなだれ、品のある脂の甘みの奥に、ひっそりとたくましい鉄分が眠っている。
一片の刺身が、意志を持ったかのように崩れていき、僕はカツオとディープキスをしている錯覚に陥って、溶けてしまった。
高知「ゆう喜屋」にて。