大阪であんかけうどんといったら道頓堀の「今井」でしょう。
ここのあんかけうどんも潔い。
こちらの「あんかけうどん」は美しい。
鏡面のように光り輝いて、山奥の湖面のように澄んで静まり返っている。
「ああ」。
一口飲んで、ため息が漏れた。
舌をいたわり、体中の細胞へ深く染み入っていく滋味があって、幾度すすっても充足のため息が出る。
その出汁としなやかなうどんがからまって、口の中で優美な舞を舞う。
ふうふうと息をかけながらゆっくり食べ進む。
はふはふと言いながら、静かに食べる。
そして一人、小さな幸せを噛みしめる。
そうあんかけうどんは、一人で食べるに限ると思う。
「今井」
大阪を代表するうどん屋。その鼈甲色のゆるぎなき出汁の旨味は別格である。
出汁が命とする大阪うどんの白眉。