唐辛子が火花を散らし、山椒が爆ぜる

食べ歩き ,

唐辛子が火花を散らし、山椒が爆ぜる。
辣に口腔は痛み、麻に舌は痺れる。
それなのに、なぜか優しい。
優しいのは、木下牧場の牛肉が噛むほどに滋味を溢れさせるからである。
麻辣の味わいに頼りすぎることなく、「大鵬」の渡辺さんが、極めて質の高い牛肉を使っているからである。
だからこそ、強烈な味わいの中で恵みを感じ、優しく感じる。
いや、肉に力があるからこそ、麻辣味が生きるのである。
羊のクミン、朝天辣椒、青山椒炒めもそうである。
それぞれの香りと刺激が複雑に交差する中、羊の香りと肉汁で口の中が満たされ、穏やかな気分となる。
これまた羊の質の高さがあるからこそ生まれた幸せである。
皮がパリンと香ばしく弾け、コラーゲンたっぷりな肉が表れて、止らなくなる豚足の四川香り焼き。
料理を食べながら、無性に、彼の作る「水煮牛肉」が食べたくなった。