柚子胡椒

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口に入れた途端、涼やかな風が吹き抜けた。
香りが、鼻腔や味蕾から汚れを落とし、清めていく。
これが柚子胡椒なのか。
9月のたった2週間、青柚子は大人になるべく成長し、青唐辛子も辛味を蓄えながら青々しさを増す。
最高な条件が整った柚子と青唐辛子の逢瀬は、たった2週間しかない。
青柚子を人に例えれば、18くらいだという。若いとまだ味も香りも薄く、19になると青々しさが抜けていく。
そのちょうど中間の18歳は、青々しさと大人の気配を合わせ持つ。
モラトリアムを抱えた柚子の無常がある。
その柚子の皮をむいて刻み、塩を振って、すり鉢でする。
青唐辛子も皮をむいて刻み、塩を振って、柚子皮と合わせ、すり鉢でする。
出来立てをひとつまみかじって目をつぶれば、柚子園に立っていた。
柚子の精と息吹に包まれる。
市販の柚子胡椒とは違う、自然の恵みへの感謝と畏怖が起こって、無言にさせられる。
「マンジャペッシェ」の清水シェフが料理に仕立てた。海苔のパスタに散らした柚子胡椒はどうだろう。
海苔の香りとうま味がねっとりとコンキリエに絡む中、柚子胡椒の爽快が追いかける。
海と山の清らかさが舌の上で抱き合い、体に滋養を与えながら浄化していく。
一方ムラングシャンティをカリッとかじれば、甘さが広がって、その甘さが弱まっていく刹那、柚子の香りと唐辛子の辛味が突然顔を出す。しかし感覚は霧のように消えていく。
あれは幻だったのか。もう一つ食べたい。しかしもうない。
それでいい。
自然なのだから。

卵かけ御飯と柚子胡椒の話はまた後で。