博多「みすみ」の内臓。 博多満腹紀行1

食べ歩き ,

久しぶりに博多に行った。
行ったからには、ウマイモンにありつきたい。
ライブは7時からなので、軽く腹に入れておこう。
5時に空港に着くと、春吉の路地裏に直行した。
「みすみ」。
できますものは、もつ煮込みだけという潔い店である。
席について酒を頼むと、黙って、博多葱を山盛りにした小鉢が出される。
心の準備を始めろという挨拶だ。
ご主人は、もつの上に、汁をなんべんもかけまわす。
わが子の背中に湯をかけ流しているかのように、手つきは丁寧で、愛情がこめられている。
やがて三本選んで皿によそった。
客は葱をかけ、一味をかけ、食すのだ。
串の先から、センマイ、アカセン(ギアラ)、ゴンズ(腸の一部)、コプチャン(小腸)となる。
優しき味噌味のスープをまとったもつは、前歯でコリ、奥歯でぐにゃりと躍動する。
アカセンやコプチャンは脂のうまみがあって、センマイやゴンズは、歯ごたえの妙がある。
特にゴンズは、前歯と奥歯を総動員させて存在を確かめなければならない。
小さい体のわりに、実は、この仲間たちの中で一番くせ者なのだ。
くせ者ゆえに、うーん、クセになるなあ。
三本食べ終わると、後は客が手を伸ばし、好きなだけとればいい。
冷めてしまうので、一本づつ取るのが正しい。
一本とったら、お玉でスープをすくってかけるのが正しい。
一本食べたら、葱をスープにしたし、スプーンで食べるのが正しい。
すると、また一本、という具合である。
「藤霧島の芋をお湯割でください」。
おいおい仕事前に大丈夫か。
なぁにバカなこといいおうとか。ここは博多たい。
気がつけば、無意識に手が鍋に伸び、一本、また一本と重ねてしまう。
いけない。今日は七本で仕舞いとしよう。
「お勘定お願いします」。
「はい、1950円です」。
「ごちそうさま」。
これも博多である。

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