今日の言葉「あがり」
「あがりください」。
町寿司で隣の推定30代男性が、そう頼んだ。
すると大将が従業員に、「お茶をこちらにお願いね」と、伝えた。
僕も「お茶をください」と頼めば、従業員が奥に「あがりください」と伝えた。
これが正しい。
「あがり」は、職人の符牒なので、客がいうものではないと、寿司を教えてくれた上司に散々言われた。
「むらさき」や、「シャリ」、「ガリ」、「オアイソ」や「ナミダ」、「ギョク」も、禁止だよと、教わった。
以来今でも使わない。
上司の教えだけでなく、池波正太郎は「通ぶってお店の専門用語を使うことほど野暮なことはない」。
山口瞳は「客が使うものではない」と、書いている。
だがいままではその頃のように、通ぶっていう人はいない。
ことに「シャリ」や「ガリ」は、一般的定着して、「酢飯」や「生姜」という人の方が、マイノリティであろう。
でも僕には抵抗がある。
日本人が日本人であるのは、日本語を話し、書くことに他ならないからであろうし、言わないことが、寿司職人へ敬意であるからと考えるからである
