いまだ食べログ点数3.08。
今年上半期であったレストランの中で、最大の掘り出し物だろう。
「ソノール」は、2019年、自然に埋没する奥入瀬渓流ホテルに開店したフランス料理店である。
岡 亮佑シェフによる、青森の豊な食材を巧みに使った、創造的で唯一無二な料理がいただける。
まずはテラスで渓流を眺めながら、アペリティフとアミューズをいただく素晴らしい時間を過ごそう。
3月にいただいた時の、アミューズは。ネギのホットミルク。グジェールトリフ。小麦粉と昆布 黒むつのブリニ。帆立干物チップスに帆立、カレーパウダーとアチャール。マルメロのサブレ。
前菜は、シェリーのぬる燗と合わせると肝の香りが膨らむ。「あん肝と身とアンコウの出汁のタルト。味噌バター」。
次は、上にゆり根とマグロ節出汁と自家製マグロ魚醤を合わせたジュレが載ったマグロのタルタル。
マグロ自体の爽やかな香りが走った後から、出汁と魚醤の太いうまみが広がっていく。そ
の濃密を、優しい百合根が和らげる。
なんと優美なのだろう。
絶妙なバランスで構成されているがゆえの、優美である。
「朗々と響かせて」という音楽用語を持つこの店の根源を感じさせる一皿である。
続いてイカの旨みが凝縮した、カリフラワー薄切りで包んだ焼売。
北寄貝とシャモロックと山菜のペーストによるサラダ。
次はアブラツノ鮫のヒレと猪の料理。煮たヒレに焼いた猪と猪チップスを合わせた料理である。
ソースはシャモロックと干し貝柱だという。
猪のコラーゲンとアブラツノザメせびれのコラーゲンが調和する。
魚料理は青森のカリスマ鮮魚店店主、塩谷さんの魚を使う。
揚げた赤むつにトゲクリガニのアメリケーヌソース、もやしリゾットだった。
濃密な味わいのソースに赤むつの豊満な味わい、素朴なリゾットの味わいと見事なバランスで構成される。
肉は「サカエヤ」の鹿児島経産。
実にエレガントに焼いている。
またガルニの筍や蕪を包んだほうれん草料理が素晴らしい。
そしてデセールは、ゴルゴンゾーラのドルチェ。
チョコの濃密と牛蒡の青土臭い香りが合う、牛蒡のグラニテ。
リンゴ一個を使ったタルト・タタンの幸せに包まれながら、南部煎餅風に焼かれた、焼き立て豆入りフィナンシェを食後酒で楽しみながら、夜は更けていく。
ペアリングも起伏に富み、的確で面白い
料理を食べにいくためだけに出掛ける価値のある店である。