人間は自然の一部です。

食べ歩き ,

「お前に私が食べられるのかい?」 。
肉は問うてきた。
熊本阿蘇で飼われている、草原あか牛を見て、夜はその肉をいただく。
大人の修学旅行である。
おとなしく、目が優しく、毛並みがきれいなあか牛たちは,知らぬ人間がいても、悠然と草を食んでいた。
群れることもなく,気ままに、ひたすら草を食んでいる。
近寄っても逃げることがない。
あちこちに牛糞があるが,臭くない。
漂うは、風が運んでくる青々しい雑草の香りである。
牛と一緒に昼寝したくなった。
夜は市内の「アンティカロカンダミヤモト」で、草原あか牛のステーキをいただく。
「命の尊さが身に沁みました」とは、言わない。
気づかされたのは、いくら都会に住んでいようと、人間は自然物であるということである。
たから人間は、自然と繋がっていなくてはいけない。
自然に頼らなくては、生きていけない。
宮本さんが薪火で焼いた、ビステッカが出された。
焦げ色は凛々しく、断面は艶めかしい。
噛めば、ガリッと表皮が音を立てて香ばしく、中は生肉に通じるしとやかさがある。
その対比が、一層肉の躍動を伝える。
表出した肉の息吹きが、体に充満していく。
命を経って、我々の命を育む。
その現実を叩きつけ、胃袋へ去っていく。
喉の奥に,命の余韻が、いつまでもいつまでも留まった。