ラングスティーヌが

食べ歩き ,

ラングスティーヌが舌の上で、意味ありげに微笑んで、僕は恋に落ちた。
華奢に見えるがその実豊満で、清楚な佇まいだが妖艶を隠している。
持って生まれた格式の高い品が漂うが、体の芯では男を誘う。
そんなアンビバレントな美しさが、皿から立ち上る。
コンフィにしたウイキョウのほのかな甘みと爽やかな香りに、泡に仕立てたベルス(ハナニラ)の清らかな香りが、ラングステーヌを包む。
上に散らした海老のフォンは、そっと旨味を支えている。
すべてが、ラングスティーヌを優美にするために手を差し伸べている。
しかし一陣のわざとらしさもなく、どこまでも自然で、悠然として輝いている。
口に運ぶ。
再び恋に落ちる。
だがそれは、たまゆらの儚さなのだ。
パリ「Alliance」にて。