極私的餃子偏愛史第4弾 衝撃編3 わかってないなおまえは

食べ歩き ,

前号まで~

大学生になり、外食にて餃子を体験していく中で出逢った、3軒の衝撃。一軒は神保町「スヰートポーヅ」。一軒は、外苑前「福蘭」。そしてもう一軒は。

 

「わかってないなおまえは。そんな店はだめだ、だめだ。俺の知っている店に、連れて行ってやるから」。

なに事においても高飛車に出る先輩だった。こちらの発言は、すべて青二才の寝言と笑い飛ばす。さらには返す刀で、それはこう、これしかありえんと、全人類が認めたかのような自信で、反論してくるのだった。

衝撃を受けた「スヰートポーヅ」や「福蘭」は、いとも簡単に否定された。そして餃子ならここしかないと、言い切った。

連れて行かれたのは、高田馬場の路地である。坂道に建つ一軒家には、「餃子荘 ムロ」という看板が掲げられていた。

オレンジ色の光に青文字で光る「餃子荘」と、「ムロ」というカナの店名は、十分に怪しく、そこには確かに、ほかとは違う手がかりが気配を放っていた。

店に入ると、細長いカウンターが奥に伸びている。

「いらっしゃい」という太い声の主は、厨房の手前で、睨みつけるように、大きな目を光らせた。

睨みつけながら、手元は動き、コシも前後に揺れている。見れば生地を麺棒で延ばしながら円形にし、次々と餡をくるんでいるではないか。

餃子が作り置きではない。当時、こんな店はあり得なかった。注文を聞いてから、皮を成型し、餡を包んで、焼く。

「おい、なにしてんだ、早く入れよ」。

先輩の声で気がついた。初めて見る光景に口を開けたまま、立ち尽くしていたのである。

嬉しくなった。注文してから皮を作るという餃子は、どんな味がするのだろうか。粉っぽくはないだろうか。餡と皮が分離はしないのか。

食感がいいのか。香りがいいのか。思いを巡らす横では、先輩が注文を紙に書いている。

そういう流儀らしい。メモを見て、おばさんが復唱した。

「えー、ビール二本に、餃子が二人前、にんにく二人前、紅二人前、バクトに唐揚げね」。

「うん、とりあえずね」。

「ん?二人で餃子6人前も食うの? とりあえずって、さらに食べる気? しかもにんにく、紅、バクトってなに?」

先輩に質問しても、「黙って座ってろ」といわれるのがオチである。しかたなく、無言でナゾを飲みこんだ。