タタール人は、想像だにしなかっただろう。
自らが、苦肉の策で生み出した料理が、ドイツで発展、変化し、アメリカで流行り、さらに極東の日本に渡って、深く愛され、誰もが親しむ料理になろうとは。
いま日本では、多くのハンバーグ専門店が生まれ、中には行列が絶えぬ店もある。「俺の~」と、プライドむき出しで、ハンバーグ勝負をしている店もある。
かと思えば、北海道より進出し、全国344店舗展開するハンバーグチェーンもある。
昨日その特集をやっていたが、埼玉工場では3万個作るそうな!
銀座「かわむら」のように、一皿1万円近いハンバーグもあれば、定食で五百円の店もある。牛肉100%もあれば、牛豚混合や豚100%、羊肉や馬肉のハンバーグ、はては熊のハンバーグまである。
肉だけではない。
豆腐だってイカや海老だって、ハンバーグにしてしまう。
中には、チーズを入れたりご飯を入れたり、カレーをかけたり、つけ麺にまでしてしまった。
日本人のハンバーグ偏愛指数は、角も異常に高い。
タタール人どころか、ドイツ人やアメリカ人もはるかに凌いで、世界一ハンバーグに愛を注いでいるのかもしれない。
恐らく、肉を噛みしめることを尊ぶ欧米人とは異なり、肉に「柔らかい」を求める傾向にあるからではないだろうか。
もちろん、ご飯で受け止める存在としての偉大さも忘れてはいけない。
だが不思議なのは、ステーキ肉には香りを求めるのに、ハンバーグには求めない。
底辺に、大衆食という。意識があるからか。
これではハンバーグが可愛そうで、未来がないと思うのだ。