デリーでマサラに浸ってきた。
胃薬と整腸薬を携え、五日間二十食、魔皿の泥沼にはまってきた。
初日は、IWCホテル内「ブカラ」。タンドール料理の高級店だ。
生紫玉葱にチャットマサラをかけただけの突出しからして、カレー的混沌のうまさがすでにある。
タンドール料理では、カリフラワーの揚げ焼きがたまりません。軽い衣の中でくたくたになったカリフラワーが、ああ、ムースのように舌に甘えてくる。
肉は鶏と羊。中でもマサラ味が染み込んだ羊の味が濃密だぞ。
夜は、カシミール料理の名店「チョロバザール」。パニールのマサラ巻き焼き、レモングラスとライムの葉で風味づけして焼いた海老。日本では全く出会えぬ味に、鼻息が荒くなる。
フェンネル入りトマトソースで煮込んだ鶏肉や、カルダモン入りヨーグルト風味のラム肉団子等、珍しい肉料理では、ラムのスパイス揚げが面白い。食感は、まさに羊肉のコンフィである。
翌朝も好調。混沌雑多のオールドデリーの市場に突入する。果物やジュース売り、床屋、チャイ屋、スパイス屋、ナン屋、鶏肉屋、羊肉屋、甘味屋、自転車屋、ビリヤニ屋、焼き芋屋。通りの両端に、露店が立ち並ぶ。
芋と小麦粉を混ぜてパン状に焼き、マサラを塗った、辛いアルパラタを購入。揚げてシロップ漬けにした、ジャーレビーで辛味を鎮火し、噛みマウスウォッシュのバームで、リフレッシュする。
朝食は、「カリムホテル」の「羊の膝肉カレー」。表面に浮いた油を取り、焼きたてクルチャで食べれば、羊の香りがキックして、手が止まらん。その勢いで、市場散策。
ビリヤニ屋で意外と味が上品なご飯をつまみ、さらにディープな街、バラヒンドゥラオへ移動する。
牛肉のカレーを食べるのだ。多宗教のインドでは、牛肉を食べる人もいる。着いた店では、上半身裸の大男が、薪釜大鍋を長い棒でかき回し続けている。
ヌハリと呼ぶ牛のごった煮は、まさにラグー。牛の滋味が渾然と丸く溶け込んで、食欲を煽る。
インドの銀座コンノートプレースで、今現地の若者たちに大人気だというミルクシェイクを飲んだ後の夜は、趣を変えて南インド料理、ガラスのコップ! 入りのラッサムスープ飲みながら、ウタバムやドーサに齧りつく。
元祖バターチキンの「モティ・マハール」では、日本とは違う、スパイシーなトマトポタージュ味のバターチキンの虜となり、「ニザム」のロールスナック齧れば、下