チーズ工房「ボスケソ」

日記 ,

「チーズは鎹、人と食材をつないでくれるものだと思います」
元HONDAのF1チームの空力エンジニアであった是本さんはそういって、目を輝かせた。
チーズ工房「ボスケソ」は、里山に囲まれた山の中にある。
奥さんと二人で、チーズを作り続けている。
ヤギの聖地と呼ばれる望月と、小林さんという優れた酪農家と出会い、
「自分のチーズは、まだまだです」と言いながら、すでに多くのファンを持つ。
「シャツがかっこいいですね」というと、
「ケーキ職人は、パティシェと呼ばれてかっこいいけど我々はチーズ職人としか呼ばれない。だからカッコヨクしなくちゃ若者が憧れないと思ったんです」と、笑われた。
日本酒の麹を塗ったり、様々な食材と合わせたり、吟醸酒に合うように考えたりと、話は尽きない。
是本さんのチーズはどれも素直で伸びやかで、乳の香りに満ちている。
温泉水などで洗ったというウォッシュチーズは、したたかな匂いを放ちながら舌の上で滑らかに溶け、直ちに酒が欲しくなった。
チーズ作りは長いけど、まだ売るようになってからは、半年だという。
今でも十二分に素晴らしいけど、きっとこれから彼のチーズは、彼自身の技も知恵も工房も熟成して、もっと色っぽくなるんだろうなと思って、ニヤリと笑った。