サンフランシスコMeadowood

食べ歩き ,


サンフランシスコ、ベイエリアの三ツ星は、二軒ともナパにある。
フレンチランドリーとメドウッドである(スペルはMeadowoodでガイドブックにはミードウッドと書かれているが、現地のワイナリーオーナーには通じなかった。正確にはメ(メとミの間の発音)ドウッドらしい)。
かの有名なハーランが経営する、二つプール、テニスコート、9ホールのゴルフ場を擁する広大な敷地に建つ、ラグジュアリーホテルである。
ちなみに友人は宿泊し、プールまで電動カートで行き、迎えを要求したところ、メルセデスが僅か1分の距離に迎えにきたという。
我々のホテルは、Meadowoodから車で5分ほどの場所だが、ここはNAPA。タクシーはいない。
どうやって行けばいいのかとフロントに聞けば、大丈夫車を呼ぶからといわれた。
ロビーで待っていると、紺のスーツを着た大柄の男性が現れて、うやうやしく名前を呼ばれる。
Meadowoodからの迎えの車なのである。
森の中のレストランということなのだろうか、木造の建物は、ウェイティングもダイニングも六角形に作られている。
ウェイティングは、暖炉の灯りが揺らめくソファー席で、すでに数人がくつろいでいた。
カップルが多く、女性は老若にかかわらず、高級なドレスをまとっている。
9時の予約。
ドライシェリーをお願いし、待つ。
9時45分、3時間、16皿の食事がスタートした。

Meadwood.(写真26枚、お時間のある時にごゆっくりどうぞ)
さて、全16皿というのは、起伏の持たせ方や緊張の持続させ方が難しい。
フランス料理はアントレに、割烹はお造りとお椀に一つのクライマックスがあるように、16皿の中に起承転結、すかしと驚き、安寧を織り込む術が、Christopher Kostowシェフは、若干37歳ながらにして巧みである。
オリーブを使った可愛いアミューズとミニ野菜の酢漬けの後に、ケールのチップとチョリソーを使った料理が、古い料理本の上に置かれる
昔の料理書にケールを使った料理が出てくるゆえの演出だという。
そしてトマトとドライとトマトを使った、軽やかな前菜の後に、なにやら艶かしい皿が出される。
薄く薄く切ったホッキ貝でラルド、レタス、アボカドを合わせたムースが包まれる。
微かな潮の香りと、レタスの甘みに寄り添うアボカドとラルドのコク。
それは一つの生きもののように自然で、出過ぎないうま味である。
ここで出されたミルクパンに、心を和ませていると、炙った平貝と生姜を合わせたものが出され、手でつまんでどうぞという。
まさにすし屋さんでいただくそれである。
次は、柔らかく火を通したツブ貝に、ブロッコリの新芽、オカヒジキとハーブ数種を合わせたものに昆布だしを注ぐ。
うま味を出しすぎない、昆布だしの塩梅がよく、野菜と貝が自然に馴染んでいる。
そして鮑(というよりトコブシか?)と茄子とアイスプラント。
貝のほの甘味をくたくたにされた茄子の甘みが持ち上げ、薄味に仕立てられた醤油味のスープが、心を座らせる。
続いて鮭の瞬間スモーク。皮だけパリパリに焼いて冷凍庫にすぐ入れ、瞬間スモークしたものだろうか? (オリジナルは四谷の名店でであったことがありますよね)
添えられたカブとカブの葉のソースが素晴らしい。
カブはムース状の寸前まで圴一に火が入れられ、青々しい香りが放たれ、それが燻製鮭の香りと共鳴する。
そして南瓜に羊のヨーグルトとタピオカをかけたもの。食感が面白い。
さらには、きつめの塩のチキンブロスに、粉状のプロポリス。
そして微かな燻製香をまとわせたグリルダック。ハイビスカスの葉とベリー
仔牛のショートリブとデイル、飛び子入り仔牛のタンのソースと続く。
ここまで冒頭のミルクパン以外はサーブされないのだが、ライ麦パンが出され、チーズとバターを練り込んだものと、リンゴとマーマイト!を合わせたディップが供される。
懐かしいようなで新しい、安っぽいようで不思議さを持ち合わせた、妙なディップである。
デセールは、人参のソースを流した中に置かれたココナッツミルクプリンにオリーブ油と、酸味を含んだチョコ入りパネトーネ。
ココナッツムースにキャラメル、ソースショコラ、棗を合わせた皿。
燻製香が重なるのが気にはかかったが、野の草や野菜と魚や肉をどうかさせるためか? あるいは森を意識させる為か?
どれも斬新ながら、尖らずに、どこかに郷愁とのどかさを感じさせる辺りは、やはりサンフランシスコの文化である。
こちらも和の調味料や手法がとりいれられていたが、いやらしくない。確実に自己消化させてから生み出した味を感じた。
ワインは、ローカルなものからシャルドネ2種、カベルネブレンド1種を、名物ソムリエのRom Toulon氏に選んでいただいた。
なにしろワインリストは、恐ろしく分厚く、140種はあって、ワイン好きなら、読みこなすのに1時間はかかってしまうからね。
白はもちろん、カルトワインでもあるpeter maichelが200$はお値打ちかもしれない。
30席のために、15人(内パテイスリーは5人)が働くという厨房は、機能的で、無駄も汚れも匂いも一切ない。
50以上のガラス瓶に、様々なスパイスや調味料、エッセンスが入れられている。
若い(20代後半)料理人が厨房の説明をしてくれたが、誇りと働く喜びに満ちていたのが素敵だった。