「奇跡や」。

1125分に入ってきた常連客が呟いた。

カウンター9席の小さなカレー屋は、11時開店と同時に満席になる。

1110に入ると、すでに満席で、やがて1人食べ終えで席に座れた。

「一番乗り,ありがとうございます」。

店主が声をかける。

「初めてですか？」

席に座ると聞かれた。

はじめての客は、辛い花火カレーは頼めないという。

ゆえにミックスカレーを頼んでみた。

「うちのカレーは，ししとうの苦味と交互に食べてください。スイカに塩と同じ様に、ししとうの苦味がカレーの香りを高めます。そのため最初にシシトウを齧ってから食べ始めてください」。

カレーが運ばれると、説明された。

ししとうを齧る。カレーを食べる。

ししとうをかじらないで、カレーを食べる。

おや、不思議。

苦味と香りにどういう化学反応があるのかわからないが、確かにししとうを齧ってから食べると、香りが増す気がする。

やがて、男性一人客が入ってきた

「レッドください」と，辛いカレーを仏頂面で頼む。

「かなり辛いですけど大丈夫ですか？」

「大丈夫です。大丈夫です」と言って、子供の様な笑顔を浮かべた。

女性二人客のところへもカレーが運ばれる。

「お二人お洋服は白ですが，うちのカレーはやんちゃなのでお気をつけください。」。

実に大阪らしい。

好きだなあ。