カオマンガイを「エロい」と思ったのは、初めてである。
運ばれてきた茹で鶏は、皮が艶やかに光っている。
薄く、存在感のある皮から、肉が見え隠れしているが、それもまた艶やかである。
「早くお食べ」と、手招きされているようで、喉がグッと鳴った。
食べれば、皮はプリンと弾け、裂けていく。
肉に歯が食い込めば、しっとりと優しく、ゆるゆるとエキスが滲み出る。
皮下の腿の部分は、よく動いているのだろう。
赤身を帯びた肉色で、「筋肉質だけども噛み締めてね」と、囁きかける。
肉のエロさはこれだけではなかった。
別の鶏肉を頼むと、なんと皮が黄色い。
新鮮な証か、餌の関係か、こちらの方が、遥かにエロい。
薄皮の下から覗く筋肉は(一枚目の写真)、さあ噛んでごらんと、耳元で誘いかける。
これはプーレ・ジョンヌか香港の「三黄鶏」か。
チキンライスを食べるのも忘れて、片っ端から頬張ってしまう。。
だがエロい誘惑はこれだけではなかった。
レバーである。
脂がついた茹でレバーである。
食べれば、微塵もパサつき感はなく、歯がしっとりと抱きしめられる。
これはフォアグラ ではないか。
フォアグラ 同様、脂が放つ香りが、なんとも甘美である。
手元にはビールしかなかったが、貴腐ワインを飲んだ妄想をして、目を閉じた。
まいりました。
オーナー店主のムックさんは、元々ガパオライスの店をやられていたが、カオマンガイを極めたくて、店を休み、3年間試作を重ねたのだという。
どの国にも、変態はいる。
ムック マンガイ | シンガポール・スタイル・カオマンガイ