イチジクの不思議。

食べ歩き ,

いちじくは、不思議だ。

味も香りも歯応えも大人しいが、奥底にしみじみとしたうまさがある。

そこが魅力なのか、日本料理で多用される。

料理では、ゴマとの意外な相性を見せる和え物が有名だが、京都南座裏にあった「あじ花」のワイン煮が忘れられない。

まるで生れ落ちたときからワインの味をまとっていたかのように、煮汁といちじくの味が丸く、一体となって優しく、心をなだめ、座らせる。

料理の深淵が、まさしくそこにあった。