わたしの料理本リレー

日記 ,

【わたしの料理本リレー】
主婦と生活社.料理の本@ryourinohonから始まった
「おいしいには訳がある」をキーワードに味覚学を通して、食育やお家ご飯向上からの健康を目指して活動されている、宮川順子さんから回ってきました。
タベアルキストとして外食ばかりしていますが、実は料理が大好きで、初めて作ったのは小学4年生の唐揚げで、大学生の時にかなりはまり、食べたここともないフランス料理や中国料理、コーンタンなどを作りました。
当然ながら書斎は、料理本が溢れかえって、オススメの本は山ほどありますが、個人的な思入れのある3冊を選びました。
1.「檀流クッキング」檀一雄 中央公論社
 読んだのは21歳の時で、今から44年前です。「火宅の人」を始め、彼の小説は一冊も読んでないのに、「わが百味真髄」、「美味放浪記」はむさぶるように読んで、この本に行き着きました。
日本全国と、台湾・韓国・スペイン・ポルトガル・モロッコ・ドイツ・イギリス・フランスなど列国を旅したこの作家が、現地で覚えた料理をまとめた料理本であります。
1976年といえば、まだ円が360円。大学生の自分にとっては、60種類くらい書かれている料理は、ほとんど味わったことがない。未知とスリルに富んだ憧れでした。
そこで私は、いくつか作ってみたのです。ただし材料は書いてあるが、切り方や量、時間などは、大雑把にしか書いていない。これで食べたこともない料理を作るのは、至難の技でした。
「大根餅」を作ってみようと思いたったのは、次の文章を読んでお腹が鳴ったからです。
「ラードと大根、薄い塩味と胡椒の香り、わずかな胡麻油だけの大根餅を、フライパンの中でキツネ色にこんがりと焦がし、唐辛子油をたらしこんだ醤油につけて食べるのが・・・」。
しかし、食べたことないので、出来上がりも想像できないまま作って見たら、クソまずい料理が完成し、一生大根餅は食べないと誓ったのであります(いまでは盛んに食べていますが)
さらにめげず今でも作るのが、スペイン風イカの炒め「プルピートス」です。
このように、味を空想しながら挫折と成功を繰り返したことは、きっと僕の料理脳を引き延ばしてくれたに違いない。そして世の中には、わざと不親切な方がいいこともあるということも教えてくれた先生なのです。
2 「日本の素材 イタリア料理」ルイジ・フィダンサー 1982刊中央公論社
 写真を見てもわかりますが、無茶苦茶使い込んでいます。六本木の星条旗通りにかつてあった「りすとらんて はなだ」の料理長だったイタリア人ルイジさんの料理本です。
 この本を紹介する前に、大変お世話になったのは、この中央公論社が出していた料理本「暮しの設計」シリーズです、ほとんど持っていますが、よく使ったのは、
「春田光治 魅惑の南仏料理」。
「石鍋裕 フランス家庭料理」。
「西川治 世界のサラダ」。
「大原照子 ヨーロッパのお惣菜」。
「長尾和子 リヨン料理アラメゾン」。
「母から娘に伝える 邱家の中国家庭料理」。
「久田大吉の中国風おそうざい」。
「陳健民 建一の中国家庭料理入門」といったところです。
まさか20数年後に、料理の仕事をして、この方々とお話しできる機会を持つなんて、想像すらせずに、せっせと料理を作っていました。
 この本は、僕のような素人でも簡単に美味しいイタリア料理ができる。しかも1982年当時でも、入手困難な食材はない。
最後によく作った料理だけを記しましょう。
「鯖のギリシャ風」。「イワシのオレガノ風味」「若鶏の煮込みローマ風」「スパゲッティ鶏レバーソース」、「椎茸の牡蠣姿スパゲッティ」、「サーモン入りウィスキー風味スパゲッティ」「イカとグリンピースの煮込み」です。
3.「酒飲みのまよい箸」浅野陽 文化出版局
 東京芸大の教授だった、陶芸家浅野陽氏のエッセイ集ですが、なんとレシピが280も記されている、根っからの食いしん坊で、料理を盛る器作りに専念したという魯山人のような浅野氏が書いた本です。
 お客を招いて料理を振る舞い、酒を酌み交わすのが大好きだった先生は、こんなことを書かれています、
「自分自身の料理としうるのは、想像力であり創造力です。それによって初めて。料理が生き生きとうたうようになるでしょう」。
 料理本を見て料理を作っていた僕は愕然としました。紹介されている料理は、こんなに食事を重ねている僕でさえ、食べたことのない料理です。
 ひとひねりふたひねりされているのですが、てらいがない。つまりどうだすごいだろうといった、男の料理にありがちな自己の強さがない。
 そしてどの料理にも理りががきちんとなされている。どのページを見てもうーんと唸ってしまいます。
 実はどの料理も作ったことがありません。なにかそこに入るのが怖いような気がしていて、頭の中で長く妄想しているのです。
でも今年こそは作ろうと思います。多分試作を繰り返さないと精度が上がらない料理なのだろうなあ。頑張ります。
長くなりました。
私が渡すバトンは、「クリスチアノ」や「そうざいともんじゃさとう」などをやられている、多読家の佐藤幸二さん
もう一人は、石垣島「辺銀食堂」の料理研究家ぺんぎんあいりさんです。
よろしくお願いします
写真の説明はありません。