またここにも変態がいた。

食べ歩き ,

またここにも変態がいた。
どどうっ。
汁を飲み、麺をすすり、肉にかじりつく。
どどうっ。どどうっ。
食べるたびに、大地が鳴動する。
これはもはやラーメンではない。
北海道の凛々しき大地である。
生命力のたくましさに唸り、豊かな味わいに笑う。
ホゲットの肩ロースをソテーし、ダックラーメンエイジの店主が作ったオリジナル麺を茹で、羊の骨とアキレス腱、鰹節でとったスープを張り、特別な白アスパラと緑アスパラを乗せる。
スープを飲めば、鰹節の香りの向こうから羊の大群がやってきて、味覚を鼓舞する。
麺をすすれば、小麦の甘い香りが立ち上り、噛んで噛んで麺のほの甘みが広がっていく。
そしてホゲットに齧り付けば、勇壮なる滋味が舌に滴り落ちる。
「俺は食らっているぞお」。立ち上がって叫びたい。
そんなラーメンである。
昼だけ限定10食。予約制。
「昼膳 無柳庵」の「足寄町石田めん羊牧場さんのホゲット肉のグリル、羊骨と鰹出汁の熱々麺」。
三千円と高価だが、儲かってはいないと思う。
かといって趣味ではなく、北海道の厳選した食材に敬意を払って、変態プロが作り上げた傑作である。
「せたな町ファームブレッスドウインドさんの放牧黒豚 ローストポークと季節の野菜、トンコツと鰹の合わせ出汁」2000円も美味かったぞ。