とうもろこしの先っちょがすきだ。
つまり、ヒゲがついている方の先細り部分である。
甘さは太い部分に負ける。
でもその青臭い、ほのかな甘さにいじらしさを感じてしまう。
太い部分が、「どうだ甘いだろっ」と、大声で訴えるのもいいが、小声で「実は小さいし、あまり甘くなくてすいません」と言う、先の粒々が、たまらなく好きである。
高知から見事なとうもろこしが届いた。
新鮮な証に、皮の緑色が濃く、鮮やかで、ずっしりと重い。
まずは、生で齧ってみた。
パシュッ。
とうもろこしのジュースが、口の中で弾け飛ぶ。
食べてはいけないような、汚れなき甘味が、舌を流れていく。
飲み込むと、遠くに青臭さが微かにある。
今度は茹でてみた。
皮を少し残し、茹でてみた。
2分。
皮を剥けば、甘い湯気が立ち上って、顔を包む。
これだけで幸せである。
たまらず齧れば、甘味が太くなって、喉をぐっぐっと押すように溢れていく。
うまいなあ。
一人笑顔になって、ほくそ笑む。
次第に先っちょへと進んでいく。
小さい粒を慎重に噛み締める。
淡い甘さと青さが混ざり合う。
豊満では無い、足りない甘さが、どうにも切ない。
これが先の先まで、濃い甘味だったらどうしよう。
それはもはやとうもろこしでは無い。
濃淡が濃を生かし、淡を生かす。
そんな機微があるとうもろこしが大好きだ。