たくましくも怖い

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〜たくましくも怖い〜

シェムリアップから南へ13キロ、9月になれば湖の底となるチョンクニハの市場は、ごらんの通り、道路がボコボコである。
どれくらいぼこぼこかというと、車に乗っていてもうかつに会話できない。舌を噛む可能性があるほど、ボコボコなのである。
どうせまた雨期が来て湖の底さと、治す気もないらしい。
冬になると干上がって、市場が立つ。泥のような川や、下流にある巨大なトゥレサップ湖から捕れた魚を売る市場である。
市場といっても、築地のようなおろし市場で、しかも近所に住人はほとんどいないから、中央の市場で売る業者が買いにくる場所であるという。
この先にははるか遠くに、湖があるだけである。秘境も絶景もない。
しかしここを、この道を、でこぼこを10数キロかけて自転車でやってくる欧米人たちがいる。
マウンテンバイクならば、でこぼこを楽しみたいのねと、わかる。
しかしママチャリに乗って一人で、淡々と漕いできた男性は、なにが楽しいだろう.
この数分前には、女子のお一人様推定30代後半がママチャリで走っていた。
すると今度はカップルで、ママチャリ(男性はマウンテンバイク)と出会う。
我々のように、異国魚食文化を研究しにきたのではないのはあきらかで、まったく市場を見ようともしない.
ただただひたすらママチャリなのだ。しかも炎天下の下で。
考えられる理由4つ。
① 欧米にはない、ママチャリに酔っている。
② 自虐にだけ喜びを覚えるマゾである。
③ 中途半端な無謀にこそ、エクスタシーを得られると信じている。
④ 遠く離れたアジアで苦行を積むことこそ、自分探しになると信じている
「あいつらアホや」同行の人が言った。
確かに。いったいなにが楽しいのか。わかりません。
しかし理解できないアホは、心底たくましく、怖い。