そこには愛があった

食べ歩き ,

そこには愛があった。。

丹念に骨切り!された鯉は、ふわりと口の中で身を崩し、淡味に潜ませた滋味を滲ませる。

皮は、皮下のコラーゲンと共にぬるりんと舌に絡んで、ほの甘い。

それらを赤ワイン3本半を注ぎ込んだというジュヌボワーズソースが艶を与え、バニラを加えた菊芋のヴェルーテが、華やかさを加える。

鯉も、高良シェフの手にかかると、かくも色っぽくエレガントになるのだな。

それは有田鶏も有田豚もしかりで、鶏肉は天空の畑から届いたクレソンの清澄な香りの中で蘇生し、豚肉は、二十一種のスパイスを練りこんで熟成させた、ブール・ド・キャフェ・ド・パリを塗られて、どうにも色っぽい。

スープは、まかないから発想したという、有田鶏の胸肉とパクチー、トマトのスープで、地平線の彼方まで優しい。

そしてデザートは、有明生海苔とココナッツのソルベである。

海苔とココナッツの緩く甘い風味と油脂が、なぜ合うのか、いまだにわからない。

しかしそれを一口食べると、海苔やココナッツの存在は感じるものの、融合した一つの丸い甘美が溶け合い、夢へと誘い込むのである。

と書いたものの、この不思議を、どう言葉にしたらいいのか。

今、食材に敬意を払い、愛を注ぎ込んだ高良シェフの魔法を反芻しつつ、蜂蜜のような夜を思い返している。

なんども言う。

生産者、料理人、そして窯元の人たちの誠意が繋がった奇跡の一夜に感謝。
高良シェフと行く有田ツアー 大人の修学旅行